亮子 vs プレインズウォーカー ep.1
2010年11月9日 TCG全般 コメント (4)その髪の黒い人間と思われる種族の女は『亮子』と呼ばれていた。
異国風、あえて言えば東洋風の服はやや汚れていたが
その服が白いことは夕暮れの中でもはっきりと分かった。
私達のガイドをしているこの次元(プレイン)のゴブリンはそれを認めるやいなやはっきりとこう言った。
「まずい!!亮子だ!!!逃げろ!!!!!」
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ep.1 「D/Tの無いプレインズウォーカー」
私は次元(プレイン)を渡ってあるものを探していた
それはかつて失われた『D/T』と呼ばれるものであり
『魔術師』が『魔法使い』になるために必要なものだった。
そういう意味では私は『魔術師』のままプレインズウォーカーになった珍しい例であり
そして他の強大な力を持つプレインズウォーカ-達に比べたら非力であった。
以前、アラーラに立ち寄った際には、ニコル・ボーラス(あの恐ろしいエルダードラゴン!!)が
居るかもしれないという噂を聞いただけで逃げだしたものだし
ゼンディカーでソリン・マルコフにあった際には、恐ろしさの余り本当に漏らしそうになった。
もっとも、外見に似合わずソリンは穏やかで、親身に私の相談に乗ってくれて
『D/T』を手に入れることができるかもしれない、と、この次元を教えてくれたのだ。
この次元は『カスガ』という。
私はこの次元に降り立つと、その日から早速D/Tを探し始めた。
この次元は緑が豊か、というか殆どが深い森に覆われた山であると言ってよく
限られた平地には人が、山にはエルフやゴブリンが住み分けていた。
とは言え、都市には人もエルフもゴブリンも、他の部族も混ざって住んでいる。
この次元の特徴としては、他の次元とは違い、何事につけても極めてきっちりしており、
都市には商人が多いのはそのせいだろう。
例えば、他の次元では気まぐれなことが多いフェアリーが毎日正しく時間を伝え、
野を行く動物達も移動の際にはまっすぐ列を成した。
そして何よりも驚くべきことは、この次元では商人といえばゴブリンが多いということである。
普通はゴブリンといえばずるがしこく、不親切であり、人を騙すものであるが
きっちりとしているというこの次元の性質と、冒険的、言い換えれば無謀であるゴブリンの性質が
うまく組み合わさって、丁度行商人としてマッチしているのであろう。
そして山と深い森の多いこの次元では、このゴブリンの行商人が生活に欠かせないのだ。
エルフの部落にも、ナカティルの部落にも訪れるこの驚くべき行商人のゴブリン達に私は目をつけた。
彼らこそがこの次元で最も物知りであり、D/Tのことも知っているだろう、と。
私はこの次元で最も大きい都市の行政府(この次元ではクヤクショと呼んでいた)に赴き
私がこの次元を訪れたプレインズウォーカーであること、D/Tを探して旅をしていることを告げると
若干待たされたものの、クヤクショの長を初めとした、この次元の重鎮と思われるもの達から歓待を受けた。
私は彼らの態度を見て、正直なところホッとした。
多くの次元を渡り歩いて来たが、プレインズウォーカーであることを名乗って歓迎をされることはそう多くは無い。
大抵の次元では、プレインズウォーカーはその次元を巻き込んだ大戦の仕掛け人になっていたり、また、安定している次元でもそこに安住しているプレインズウォーカーは縄張り意識が強いことが多く、彼らは新たなプレインズウォーカーの来訪を好まない。
来た途端に散々な目にあって、這々の体でその次元を逃げ出す、ということも何度か繰り返してきた。
私は長達の歓待を受けると、目的を再び告げ、顔の広いという行商人のゴブリン・ナベと
腕のたつエルフの戦士ユパを紹介して貰うことができた。
ナベは、いたずら好きなところはよくいるゴブリンであったが
意外にも几帳面で、律儀なところがあった。この次元のゴブリンらしいと言える。
エルフのユパはその戦士という職業のせいか、逆に無愛想で粗野だったが、隙の無い感じが頼もしかった。
私たちはゴブリンのナベのガイドで、町の物知りを訪ね歩いたが、D/Tを聞いたことはあるが実際にどこにあるのか
またどうすれば手に入るかを知っているものは無く、この次元の一番の物知りである長老『タニー』のところに行って聞いてくることになった。
タニーは足を壊したため、一年ほど前から体に良い温泉の出るところに住んでいるということだが
そこは非常に深い山の中で、たどり着くには何週間か旅をしなければならない、ということだった。
早速出発した私たちは、平地では特に危険なことも無かったが、3日程して山に入ると
たちまち山ほどの大きさのあるとすら思えるベイロスや、振り切ろうとしてもしつこく纏わり付く虫、
腹を空かせた獰猛なルアゴイフと立て続けに襲われることになった。
私たちはその度に力をあわせ戦った。
ベイロスには、ゴブリンのナベに仕掛けてもらった絡め取る蔦で動きを止め、エルフのユパを巨大化させて倒した。
虫達には力強い跳躍で飛び、そのまま逃げようと考えていたが、虫たちの中に蜘蛛が居たせいで無駄に終わってしまった。
そのまままとわりつかれて手間取ったが、結局濃霧を使うことによってなんとか振り切ることができた。
ルアゴイフにはその荒ぶる心を平和な心に置き換え、ぼけーっとしてるところを刺激しないようにこっそりと立ち去った。
そうして1週間を過ぎたころ、なんとか私たちはエルフの部落にたどり着くことができた。
ここまでは山と言ってもそれほど険しくは無く、ところどころ壊れていはいるものの、
ある程度は手入れのされているしっかりした道があったが、ここからは獣道に近くなるという。
とはいえ、行程も半ばを過ぎたということで我々は一息付けると思い、遠目に見えた部落へ急いだ。
が、近づくにつれ、様子がおかしいことに気がつく。
部落、村と言っていい規模だろう、ここには木製だが物々しい門と、高い矢倉が立ち、深い木々の中でもはっきりと浮かんで見えた。
村の周囲には高い塀が建てられ、争った後だろうと思われるその高い塀の破れと焦げた跡があちこちにみられた。
ゴブリンは、2年前に訪れたときはこんなものは無かったと言う。
更に近づき、はっきりと門が見えるようになったころ、矢倉や槍を構えた門番から我々に向けられている視線が敵意をふくんでいることに気がついた。
その刹那、ヒュン、ヒュンというやや高いと共に、矢倉からこちらに矢が数本飛んで来るのが見えた。私はとっさに暴風を起こし矢を逸らせたが、ゴブリンはかわしきれず肩をやられてしまったようだ。
私は速やかに濃霧を放ち、私と傷を負ったゴブリンの身の安全を確保すると共にエルフの戦士に巨大化を与え、門に突撃させる。
もちろん濃霧を抜けだしたエルフの戦士には矢が向かってくるので、続けて危害のあり方を使いそれを門番に向けると共に、更に矢を放とうとした村のエルフの一人を糾弾し、矢倉から転落させた。
こちらのエルフの戦士は2人の門番のうち、起動の曲がった矢にダメージを受けて怯んでいた門番をすぐさま峰打ちで気絶させ、もう一人の門番も、見事な剣捌きでたちまちのうちに屈服させた。
騒ぎを聞きつけた村人達が武器を手に門に駆けつけてきたが、エルフの戦士ユパが、屈服させた門番に
剣のきっ先を突きつけると一度静まり、矢倉からの弓矢の手も止まったようだ。
私とゴブリンは警戒をしながらエルフの戦士に駆け寄ると、丁度その時
村人の中から、リーダーらしきたくましいエルフが現れ大声で叫んだ
「あなたはもしや西国一の剣士、ユパさまではありませんか?!」
ユパはエルフの中ではそれなりに名の通る戦士だったらしく、エルフ社会の中では尊敬を受ける立場だった。
この村でも例外ではなく、また幸いなことに村人側に死者が出ていないこともあって後は話がすんなりと進み、翻って歓迎されることになった。もっとも、既に手荒い『歓迎』を受けてはいるが。
エルダーエルフである村長が出てくると、まず我々に深く謝し、ゴブリンのナベの傷の手当を指示した。
そして我々の、何故このように物々しく武装をしているのか?何と戦っているのか、という質問にたいして、重々しい口調でこう答えたのだ。
「ここ最近、といっても数カ月のことでございますが、近辺にあの恐ろしい『亮子』があらわれており
私どもの村もついに、1週間ほど前に『亮子』に襲われたのでございます・・・」
続く
異国風、あえて言えば東洋風の服はやや汚れていたが
その服が白いことは夕暮れの中でもはっきりと分かった。
私達のガイドをしているこの次元(プレイン)のゴブリンはそれを認めるやいなやはっきりとこう言った。
「まずい!!亮子だ!!!逃げろ!!!!!」
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ep.1 「D/Tの無いプレインズウォーカー」
私は次元(プレイン)を渡ってあるものを探していた
それはかつて失われた『D/T』と呼ばれるものであり
『魔術師』が『魔法使い』になるために必要なものだった。
そういう意味では私は『魔術師』のままプレインズウォーカーになった珍しい例であり
そして他の強大な力を持つプレインズウォーカ-達に比べたら非力であった。
以前、アラーラに立ち寄った際には、ニコル・ボーラス(あの恐ろしいエルダードラゴン!!)が
居るかもしれないという噂を聞いただけで逃げだしたものだし
ゼンディカーでソリン・マルコフにあった際には、恐ろしさの余り本当に漏らしそうになった。
もっとも、外見に似合わずソリンは穏やかで、親身に私の相談に乗ってくれて
『D/T』を手に入れることができるかもしれない、と、この次元を教えてくれたのだ。
この次元は『カスガ』という。
私はこの次元に降り立つと、その日から早速D/Tを探し始めた。
この次元は緑が豊か、というか殆どが深い森に覆われた山であると言ってよく
限られた平地には人が、山にはエルフやゴブリンが住み分けていた。
とは言え、都市には人もエルフもゴブリンも、他の部族も混ざって住んでいる。
この次元の特徴としては、他の次元とは違い、何事につけても極めてきっちりしており、
都市には商人が多いのはそのせいだろう。
例えば、他の次元では気まぐれなことが多いフェアリーが毎日正しく時間を伝え、
野を行く動物達も移動の際にはまっすぐ列を成した。
そして何よりも驚くべきことは、この次元では商人といえばゴブリンが多いということである。
普通はゴブリンといえばずるがしこく、不親切であり、人を騙すものであるが
きっちりとしているというこの次元の性質と、冒険的、言い換えれば無謀であるゴブリンの性質が
うまく組み合わさって、丁度行商人としてマッチしているのであろう。
そして山と深い森の多いこの次元では、このゴブリンの行商人が生活に欠かせないのだ。
エルフの部落にも、ナカティルの部落にも訪れるこの驚くべき行商人のゴブリン達に私は目をつけた。
彼らこそがこの次元で最も物知りであり、D/Tのことも知っているだろう、と。
私はこの次元で最も大きい都市の行政府(この次元ではクヤクショと呼んでいた)に赴き
私がこの次元を訪れたプレインズウォーカーであること、D/Tを探して旅をしていることを告げると
若干待たされたものの、クヤクショの長を初めとした、この次元の重鎮と思われるもの達から歓待を受けた。
私は彼らの態度を見て、正直なところホッとした。
多くの次元を渡り歩いて来たが、プレインズウォーカーであることを名乗って歓迎をされることはそう多くは無い。
大抵の次元では、プレインズウォーカーはその次元を巻き込んだ大戦の仕掛け人になっていたり、また、安定している次元でもそこに安住しているプレインズウォーカーは縄張り意識が強いことが多く、彼らは新たなプレインズウォーカーの来訪を好まない。
来た途端に散々な目にあって、這々の体でその次元を逃げ出す、ということも何度か繰り返してきた。
私は長達の歓待を受けると、目的を再び告げ、顔の広いという行商人のゴブリン・ナベと
腕のたつエルフの戦士ユパを紹介して貰うことができた。
ナベは、いたずら好きなところはよくいるゴブリンであったが
意外にも几帳面で、律儀なところがあった。この次元のゴブリンらしいと言える。
エルフのユパはその戦士という職業のせいか、逆に無愛想で粗野だったが、隙の無い感じが頼もしかった。
私たちはゴブリンのナベのガイドで、町の物知りを訪ね歩いたが、D/Tを聞いたことはあるが実際にどこにあるのか
またどうすれば手に入るかを知っているものは無く、この次元の一番の物知りである長老『タニー』のところに行って聞いてくることになった。
タニーは足を壊したため、一年ほど前から体に良い温泉の出るところに住んでいるということだが
そこは非常に深い山の中で、たどり着くには何週間か旅をしなければならない、ということだった。
早速出発した私たちは、平地では特に危険なことも無かったが、3日程して山に入ると
たちまち山ほどの大きさのあるとすら思えるベイロスや、振り切ろうとしてもしつこく纏わり付く虫、
腹を空かせた獰猛なルアゴイフと立て続けに襲われることになった。
私たちはその度に力をあわせ戦った。
ベイロスには、ゴブリンのナベに仕掛けてもらった絡め取る蔦で動きを止め、エルフのユパを巨大化させて倒した。
虫達には力強い跳躍で飛び、そのまま逃げようと考えていたが、虫たちの中に蜘蛛が居たせいで無駄に終わってしまった。
そのまままとわりつかれて手間取ったが、結局濃霧を使うことによってなんとか振り切ることができた。
ルアゴイフにはその荒ぶる心を平和な心に置き換え、ぼけーっとしてるところを刺激しないようにこっそりと立ち去った。
そうして1週間を過ぎたころ、なんとか私たちはエルフの部落にたどり着くことができた。
ここまでは山と言ってもそれほど険しくは無く、ところどころ壊れていはいるものの、
ある程度は手入れのされているしっかりした道があったが、ここからは獣道に近くなるという。
とはいえ、行程も半ばを過ぎたということで我々は一息付けると思い、遠目に見えた部落へ急いだ。
が、近づくにつれ、様子がおかしいことに気がつく。
部落、村と言っていい規模だろう、ここには木製だが物々しい門と、高い矢倉が立ち、深い木々の中でもはっきりと浮かんで見えた。
村の周囲には高い塀が建てられ、争った後だろうと思われるその高い塀の破れと焦げた跡があちこちにみられた。
ゴブリンは、2年前に訪れたときはこんなものは無かったと言う。
更に近づき、はっきりと門が見えるようになったころ、矢倉や槍を構えた門番から我々に向けられている視線が敵意をふくんでいることに気がついた。
その刹那、ヒュン、ヒュンというやや高いと共に、矢倉からこちらに矢が数本飛んで来るのが見えた。私はとっさに暴風を起こし矢を逸らせたが、ゴブリンはかわしきれず肩をやられてしまったようだ。
私は速やかに濃霧を放ち、私と傷を負ったゴブリンの身の安全を確保すると共にエルフの戦士に巨大化を与え、門に突撃させる。
もちろん濃霧を抜けだしたエルフの戦士には矢が向かってくるので、続けて危害のあり方を使いそれを門番に向けると共に、更に矢を放とうとした村のエルフの一人を糾弾し、矢倉から転落させた。
こちらのエルフの戦士は2人の門番のうち、起動の曲がった矢にダメージを受けて怯んでいた門番をすぐさま峰打ちで気絶させ、もう一人の門番も、見事な剣捌きでたちまちのうちに屈服させた。
騒ぎを聞きつけた村人達が武器を手に門に駆けつけてきたが、エルフの戦士ユパが、屈服させた門番に
剣のきっ先を突きつけると一度静まり、矢倉からの弓矢の手も止まったようだ。
私とゴブリンは警戒をしながらエルフの戦士に駆け寄ると、丁度その時
村人の中から、リーダーらしきたくましいエルフが現れ大声で叫んだ
「あなたはもしや西国一の剣士、ユパさまではありませんか?!」
ユパはエルフの中ではそれなりに名の通る戦士だったらしく、エルフ社会の中では尊敬を受ける立場だった。
この村でも例外ではなく、また幸いなことに村人側に死者が出ていないこともあって後は話がすんなりと進み、翻って歓迎されることになった。もっとも、既に手荒い『歓迎』を受けてはいるが。
エルダーエルフである村長が出てくると、まず我々に深く謝し、ゴブリンのナベの傷の手当を指示した。
そして我々の、何故このように物々しく武装をしているのか?何と戦っているのか、という質問にたいして、重々しい口調でこう答えたのだ。
「ここ最近、といっても数カ月のことでございますが、近辺にあの恐ろしい『亮子』があらわれており
私どもの村もついに、1週間ほど前に『亮子』に襲われたのでございます・・・」
続く
コメント
続編を期待!!